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    第 3 章   雷 の メカニズム


雷が電気的現象であることを実証したのは、凧をあげて実験に挑んだという驚くべき勇気の持ち主 フランクリン(1752年)だった。
しかし、身近な現象であるにも関わらず、その危険さゆえだろうか、雷のメカニズムについては今でもよくわからないらしい。

今、最も有力とされる仮説に基づいて簡単にまとめてみた。

§1. 雷 雲 発 生 の し く み

 急激な上昇気流によって形成された積乱雲のような雷雲の中では、小さな氷の結晶(氷晶)と、直径数ミリメートルに成長したあられが衝突する。
 その際、氷晶とあられは反対の電化を帯びる。
 プラスとマイナスのどちらの電化を帯びるかは、温度などの周囲の条件によって変化する。

 
 そして、軽い氷晶は上昇気流に乗って雲の上部へ、重いあられは重力によって下部へ集まる。電化が分離する機構は、まだよくわかっていない。

 実際の雷雲の電化分布は、単純な2極構造ではなく、もっと複雑である。地上から6kmの高度にマイナスの電荷が集中的に集まる領域があり、その上下にプラスの電荷が広く分布するという3極構造になっている。

 
§2. 落 雷 の し く み

 空気は本来、電気を通さない絶縁体だが、非常に高い電圧がかかると、瞬間的に電流が流れる。これを絶縁破壊と呼ぶ。

 雷雲の中には、上下にことなる電化が分布している。一方、地面には、雲の下部の電化によって、逆の電化が引き寄せられている。
 こうして、雷雲と地面の間には反対の電化が大量に向いあうことになり、高電圧状態ができる。

 空気の場合は、1メートル辺り約50万ボルト以上の電圧がかかると
絶縁破壊がおこる。これは、電気的に中性だった空気の分子(窒素や酸素など)が、雷雲からの電子の衝突によって電子とイオンに引き裂かれるためで、空気は導体となって電流が流れるのだ。

1)まず、雷雲の下部で放電が起きる(下図@)。

2)それをきっかけに
リーダー(先駆放電路)が枝分かれしながら下へ進む(A)。リーダーとは、空気の分子をイオン化して電化を遠くまで運ぶ高温の通路である。

3)リーダーが地上に近づくと、最後に地上からもリーダーがのびる。上下のリーダーがつながると強い放電がおき、大電流がその経路を辿って流れる。(B)

@雷雲の中で放電 Aリーダーが下に進む B大電流が流れ可視光が放射


■ 雷雲内の電界は通常の放電を引き起こす程大きくなかった。

 しかし、気球や航空機、ロケットで雲の中の電界を直接観測した過去数十年に及ぶ結果から、雲の中の電界は20万V/
mを超えることはほとんどなく、絶縁破壊を起こすには弱すぎることがわかった。。

 そこで出てきたのが、今、一番有力とされている
逃走絶縁破壊電子なだれ説である。

■ 電子なだれと逃走絶縁破壊

 雷は宇宙線によって誘発されるものと考えられている。

 
まず、宇宙線(宇宙から地球に降り注いでいる高エネルギー粒子)が上層大気中の空気分子に衝突し、高エネルギー粒子を多数生成する。
 
高エネルギー電子などの粒子が雷雲内の空気分子に衝突して、さらに別の高エネルギー電子を弾き出す。

 ※通常、電子は空気分子と衝突すると効力が生まれて低速となるが、高速の2%以上になると効力は弱くなる。

 雷雲内の負電荷と正電荷の間の電界によって高速(高エネルギー)の電子が加速されると、効力は低下し電子はさらに高速となる。
 こうした現象が繰り返されることでできた電子(逃走電子)は、ほぼ光速まで加速されていく。

 こうして加速された電子は、多くの空気分子に衝突して次々と
逃走電子を弾き出し、その数が指数関数的に増大するという
電子なだれをおこす。
 雲の中で
電子なだれはどんどん強まっていき、ついにはとうとう逃走絶縁破壊を引き起こす。この時の臨海電界は、15万V/mでおこる。

 こうして、下層に向って電子が流れ出す。(リーダー)

 
この電子流自体は長く続かない。高速になった電子はほぼ直進するが、電場が複雑に変化してしている上、電流によって電位差が中和されるため、何十メートルか進んだところで電子の流れはいったん終息する。
 しかし、電子流の先端には電子が蓄積されているので、局所的に強い電界が生まれて、さらに多くの逃走電子が加速されて、再び高速の流れが作られる。

 こうした過程が繰り返されて、ジグザグに進む階段状の電子の経路は地面に達するまのびていく。
 このジグザグに進む電子の経路は、上記と同じく
リーダーと呼ばれる。リーダーが通った道筋は、イオン化された空気分子がふんだんに存在して電流が流れやすいので、一種の導線の役割を果たす。

 リーダーが地面に達した瞬間に、地面と雷雲がショートしたことになり、
大電流が瞬間的に流れる。この大電流によって空気が最大で3万度まで加熱され、可視光が放射される。その後、高温になった空気が急速に膨張することによって雷鳴がとどろく。この大電流は帰還電撃(リターンストローク)と呼ばれる。
 この帰還電撃の後に、ダートリーダと呼ばれる下向きの放電路がのび、再び落雷がおこる。

 現実に起きている雷は、上記の説明では捉え切れないほど複雑である。
 今、様々な方法で研究が急速に進められているので、250年前にフランクリンが命を懸けて挑戦した雷の不思議な謎は、ようやく解き明かされることになるだろう。


〔参考文献〕
  J.R.ドワイヤー(フロリダ工科大学) 「稲妻から出るX線を追え」 
        -日経サイエンス 2005年8月号-

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