☆オーロラの話

第二章  オーロラのしくみ     ──地上で体験できる最も美しい現象──


3.オーロラの色

 オーロラの色は、太陽風の成分である荷電粒子(主に電子)が、大気中の気体(原子や分子)と衝突することで、その原子や分子が発光した色です。つまり、超高層大気中で放電現象がおきているのです。
 オーロラの色はとてもカラフルな印象を受けますが、ほとんどは緑色の場合が多く、活動が活発になってくるとカーテンの上や下が赤く(ピンク)染まります。この色を決める要素は基本的に4つあります。

 @太陽風の持つエネルギー
 A高度差による大気中の成分の違い
 B大気中の成分・原子や分子の性質
 C大気の密度


   大気構造                                                     
500







F


 │
400

  
 


 

  

 

★ 
300

200

150

E層  
 
 !
100

D層
80 中間圏
50 成層圏 オゾン層
0(km) 対流圏
@荷電粒子(主に電子)がどの位のエネルギーを持って飛び込んでく
 るかで、大気中に入り込む深ささが決まります。高さが決まると、大
 気中の気体の高度分布から、荷電粒子がぶつかる気体が決まり
 ます。

A大気は、地表から100kmくらいまでは、窒素分子78%、酸素分
 子21%、残り1%の二酸化炭素・アルゴンなどからなっています。
 それより上では、太陽の紫外線などで分子が原子に壊れ、一部は
 電離し、原子イオンと電子にわかれた電離層(D層・E層・F層)とよば
 れる領域になります。
 上空にいくほど電離の割合は大きくなります。また、重力の影響で
 軽いものほど上空にいきます。 
 高度500km以上では水素原子とヘリウム原子が多く、高度500
 〜200kmの間は酸素原子が最も多くなります。
 高度200〜100kmの間では窒素分子が最も多く、残りは酸素原
              子と酸素分子でほとんどを占めます。

C
の大気の密度も重要で、少なすぎると荷電粒子との衝突が稀にしかおこらなくなるし、密
 度が高いと色を出す前に他の気体とぶつかって、発光エネルギーを衝突エネルギーとし
 て、渡してしまうので、色が消されてしまいます。大気密度は上空にいくほど低くなりま
 す。

Bオーロラの色は、上のような条件のもとで発光する大気(原子や分子)の色で、それぞれ
 の原子や分子が固有の色を出します。そのためオーロラは虹色に輝くのではなく、赤や
 緑といった特定の色(波長)で光っています。一番良く見られるオーロラの緑は、酸素原が
 放つ630nmの緑の波長です。

*極に波長630nmの緑の環が輝いている星、そんな星が他にあれば、それは酸素がある
  ということ、地球型生命があふれていて異星人と出会えるかも知れません ねっ(*^_^*)

3−1 酸素や窒素が発光した色、オーロラ色・・・ちょっぴり詳しく

 色は光の波長によってきまります。人間が色を感じとれるのは、380nm(ナノメートル.)から780nmの範囲内の波長で可視光と言います。(1ナノメートルは10億分の1メートル)
 
※光の色を波長で言うのは、光が光子という量子化された基準量で成り立っていて、それらの光子が
   特定の波長を持っているからです。


 光子は、光エネルギーと呼ばれるエネルギーを持っています。光子が人間の目に達すると、目のセンサーにエネルギーを渡して電気エネルギーに変化させ、神経を通って脳に伝えます。 光子が運ぶエネルギーは波長できまっています。eV(電子ボルト)で表す光のエネルギーは、概算ですが、1234.5を光の波長で割ったものに等しいです。例えば、630nmの赤の光は、1234.5/630で、1.96eVになります。300nmの紫外線だと4.12eVと高くなります。

  ※電子ボルトは、真空中において1ボルトの電位差を横切ることによって、電子が得る運動エネ
     ルギー。 (電子が電位差のある所を横切ると、電子が移動する方向と直角の方向に力が働く。
     この力によって電子がエネルギーを得る)  1eV は 1.6021892 x 10 -19 j


 
荷電粒子が大気中の酸素原子と衝突しオーロラの光となる過程は、光が光子という単位であることと、光子がエネルギーを持っているということがわかると理解しやすいです。
 
 
オーロラを光らせているのは、上層大気中の酸素原子・分子、窒素分子、やそれらのイオンです。それらは、普通、基底状態という最小のエネルギー状態(一番安定する状態)にあります。 酸素原子に荷電粒子・主に電子が激しく衝突すると、電子を放出してプラスの酸素イオンになります。衝突のエネルギーがそれ程激しくなくければ、原子はそのままで、エネルギーをもらって内部の配列を少し変化させます(主として最外殻の電子1個)。これを励起されたといいます。励起されるとき、原子は、ある一定量のエネルギーだけを受け取ります。

 酸素原子は、正確に1.96eVを受けとり第一次の励起状態になるか、4.17eVを受け取り、第二次の励起状態に変化します。もっと高く励起されることはほとんどありません。
 励起状態に在る原子は、受け取ったエネルギーを放出して、もとの安定な基底状態に戻ろうとします。第一次励起状態にあれば、1.96eVのエネルギーを光子に持たせて放出します。1.96eVのエネルギーを持つ光子の波長は、
630nmの赤い光の波長です。ある方向からやってきた光は、原子から放射されるときにはあらゆる方向に放射されます。

 もうひとつの4.17eVを受け取り第二次励起状態の酸素原子は、光子に2.21eVのエネルギーを持たせて放出し、ひとまず第一次励起状態に移ります。
 この2.21eVの光子の波長は
558nmの黄緑色に見える光です。最も多く見られるオーロラの緑は、この酸素原子によるものです。
 もちろん、この後、別の光子に1.96eVのエネルギーをもたせて放出します。しかし、いつでもそうなるとは限らないのです。励起した原子が、光子を放出するまでには少し時間がかかります。

      
酸素原子の発光         第二次励起状態から第一次にダウンするのは平均して0.74秒です。それに比べて、第一次励起状態から基底状態に戻るには、平均して110秒間を要します。そのため、大気密度が小さくないと、他の原子や分子に衝突してエネルギーを失ってしまいます。酸素原子が200km以上の超高層の大気密度が小さい中にあれば、110秒間、他にエネルギーを渡すことなく赤い光を発することができますが、200km以下だと難しくなります

 赤の630nmの波長、もう少し正確にいえば、酸素原子の基底状態は3つのレベルがあり、そのうちの2つにはいることが許されます。ひとつは630nmですが、三分の一くらいは636.4nmの波長が放出されています。しかし酸素原子の赤といえば、普通は630nmといわれています。

 オーロラの光の大部分は、酸素原子によるものです。また、酸素原子が出す558nmの緑は、人間の目にとても感じやすい色だということもあるようです。それに、原子が出す光のスペクトルは1本の輝線になりますが、これも鮮やかに見える要因です。もちろん、酸素以外の原子や分子もオーロラの光を出しています。


 酸素原子以外だと、あとはほとんどが分子からの光となります。分子は、基底状態にも数多くのレベルがあり、スペクトルは帯放射といって、少しずつ波長のずれた多数の線放射が集まり帯のように見えます。
 窒素分子からは、酸素の緑線と同じくらいの強度がある391nm付近の紫の光を出しますが、人間の目にはとても感じにくい波長帯です。それより少し弱い光で、イオン化された窒素分子の428nm付近の青紫色もありますが、これも感じにくい光です。
 
中性の窒素分子からは、赤のスペクトル部分でいくつかの帯放射があります、酸素の赤よりは波長が長いものですが、明るいオーロラだとカーテンの下端の部分に容易にみることができます。
                  
オーロラの良く目立つ輝線と帯
          
          
          感知しにくい←      
感度のピーク↑          →感知しにくい 
          
3−2 オーロラの色のパターン・・・その成因について

 ★赤だけのオーロラ 

   
飛び込んできた電子が500eV程度だと、高度200kmの上空までしか侵入でき
   ません。この辺りの大気成分は、水素、ヘリウム、酸素ですが、水素やヘリウム
   のだす色は暗くて見えません。酸素原子はほとんどが第一励起状態からの630
   nmの赤い光をだします。第二次励起までなるものは多くないので、このようなエ
   ネルギーの低い粒子の場合は、空全体が赤く見えるオーロラになります。


 
★緑色のオーロラ

   
10キロeVの電子だと、高度100kmまで侵入します。大気成分は窒素分子と酸
   素原子が多くなります。窒素分子の一部はイオン化されます。このイオン化した
   窒素分子からは、青と紫の強い帯放射がありますが、人間の目には感知しにく
   いスペクトルのため見ることはできないようです。 励起された中性窒素分子か
   らの赤色の帯放射も、同じく見られません。 酸素原子の第二次励起状態にな
   ったものからの560nmのスペクトルが、目の感度のピークにあたることもあって
   よく見えます。もちろん、第一次励起状態になる酸素原子が一番多いのですが、
   このあたりの大気密度だと、赤が消されてしまいます。
      
 上が赤く染まっている緑色のオーロ

   これは、飛び込んでくる電子が、エネルギーの低いものと、100kmまで到達でき
   る高いものが混合している場合に見られます。それぞれの明るさは、飛び込ん
   でくる電子の量で違います。

 
★上と下が赤く染まっている緑色のオーロ
   
   高度100km以下まで到達できる、かなりエネルギーの高い電子があると、窒素
   分子が出す十分明るい赤が放出されます。この赤は、ほとんど瞬間的に出てき
   ます。そのため、緑のオーロラより先に出て移動していくように見えることもある
   ようです。


 青紫のオーロラ

   太陽光が差し込んできたときに、電子によってイオン化された窒素分子が太陽
   の光と共鳴散乱をして、青紫の光を放射する青紫のオーロラが見られことがあ
   るそうです。



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