第2章  海の生物

1.藻類と共に

海の生物を調べていくと藻類にたどり着く。

30億年の藻類の歴史が、酸素を作り、有機物を作ってきたのだ。
この地球の生物の大繁栄は、藻類によってもたらされた。


T.藻類とはどんな生物群か
   
藻類と言っても、知っているのはコンブやワカメなどの海藻と、クロレラを思い出すくらいだろう。
しかし、藻類とは、驚くほど生命や人間の生活に関わっている生物群なのである。

〔1〕藻類は酸素を放出した。

 古代の海でも書いのだが、地球は46億年前に生まれたのだという。
地球が冷えてくると、原子の海では生命誕生の物語が始まった。原始生命は、当時の有機物のスープであった海からエネルギーを得ていた。しかしやがて、その有機物も使い果たし、せっかく芽生えた生命も消え去ろうとしていた。そんな時、太陽の光からエネルギーを得る手段を獲得したものが現われた。バクテリオクロロフィルを持った光合成細菌だ。しかし、それらはまだ酸素を出すことは出来なかった。酸素は、バクテリオクロロフィルが少し進化したクロロフィルを持つことになった藻類によってもたらされた。

  ※らん藻・シアノバクテリアについて
     最初に地球に酸素をもたらしたのは「らん藻」であるとか「シアノバクテリア」であると書かれているが、
     同じ生物である。 しかし、藻類は真核生物であるし、バクテリアは原核生物だ。
     らん藻は藍藻とも書き、シアノも藍色のという意味で、つまり、フィコシアニンという藍色の色素を持っ
     ているのが名前の由来だ。
     生物の分類は難しい。今でもその基準は確定されていないが、便宜上、分類されている。
     らん藻がどちらであるかは、まだ論争中のようだ。ここでは、分類よりもその性質を重視する。


26億年前に大発生したらん藻により、大量の酸素が発生した。
(H2Oから太陽のエネルギーを利用して電子を取り出す。そして、 H2とCO2から有機物 C6H12O6
をつくりだし、余ったOを排出する。)
そして、エネルギー獲得効率の良い酸素呼吸方を手に入れた生物は、爆発的に多様化していった。

〔2〕藻類は石油を作った。

ワカメやコンブのような海藻ではなくて、微細藻類と言われる十分の一ミリ以下の単細胞生物藻類が、白亜紀・ジュラ紀時代の海中に大量発生した。この微細藻類が光合成で作り出した有機物が、地殻変動やら地熱などの力と長い年月をかけて変性して石油となった。

〔3〕藻類は鉄文明をもたらした。

地球の地殻は鉄であるが、人間が利用できるのは藻類が関与した鉄である。
原始地球の海は大量の鉄イオンで満たされた弱アルカリ性であったと考えられている。26億年前に大発生したらん藻により作り出された大量の酸素は、鉄イオンと結びついて酸化鉄となり鉄鉱床が作られた。

深海では、硫酸還元バクテリアが硫化水素を出して鉄イオンと結びついた黄鉄鉱床が作られたが、バクテリアの餌は、海の表層で発生した藻類の死骸が海底に沈んだものであった。良くも悪しくも、鉄は人間の文明に大きく貢献することになった。

〔4〕藻類は植物の祖先

30億年もの間、海中で過ごし、酸素を作り続けてきた藻類だったが、ついに4億年前に陸上にあらわれることになる。藻類の中でシャジグモの系統だけが陸上環境に適合することができた。やがてコケのような植物に進化し、その後、シダ植物ができ、そして丈夫な維管束を発達させると陸上植物となって地上に繁栄していった。陸に上がった一系統の藻類が、4億年の歴史で試行錯誤を繰り返し、今日の多種多様な植物を発展させていったのだ。

多種多様な藻類 ⇒ 海藻類 ⇒ コケ類 ⇒ シダ類 ⇒ 陸上植物

※分子生物学の成果により、緑色植物門・シャジクモ藻綱の車軸藻類が陸上植物の
  祖先群であると言われている。


〔5〕藻類は海の生態系を支えている

魚は自分より小さな魚を食べている。その小さな魚はより小さな魚や海藻を食べている。では、小さな小さな魚は・・・プランクトンを食べている。動物プランクトンは植物プランクトンを食べている。植物プランクトンは小さな単細胞の藻類だ。藻類も海藻も光合成をして太陽エネルギーを利用して有機物を作り出している。
つまり、海の生態系は、藻類を食物連鎖の1次生産者として成り立っている。海の生物を支えているのは藻類なのだ。


U.微細藻類の世界

地球環境問題を救えるのは、微細藻類かもしれない。

〔6〕微細藻類と大型藻類

ワカメやコンブは一般に海藻と呼ばれていて、珪藻やクロレラなどは微細藻類と呼ばれている。藻類学では、特に大きさでは分けられていない。つまり、大きさは分類の指標にはなりえないからだ。
微細藻類でも多細胞になるものもあれば、海藻でも単細胞のものもあるし、海藻で多細胞でも、顕微鏡でしか見えない時期があるし、微細藻類で単細胞のものでも、多数繋がって塊になる群体をなすものがあるからだ。藻類の分類は、主として細胞の中にある色素による。

【参】表1.藻類の分類

生涯にわたって顕微鏡でしか見られないものを微細藻類、一生の中で一時期でも肉眼で見える大きさになるものは大型藻類と呼び、海産の大型藻類を海藻と呼ぶと便宜上の区分けがされている。

〔7〕微細藻類の多様性

微細藻類は、顕微鏡でしか見られないくらい小さなものだし、人間が直接に関わることもないため、あまり知られていない世界だったと思う。しかし、海の生態系を辿ると行き着くのは藻類であるし、また、環境問題やら食糧問題を考える上でも藻類に秘められた力がその威力を発揮しようとしている。微細藻類の種類は、数万から数10万種と言われていて、今も調査は続けられている。人間はただ1種であることを考えても、その多様性に驚く。

◆藻類の分類体系の主な門 (体系はまだ確定されたものではない)
・灰色植物門  ・紅食植物門  ・クリプト植物門  ・不等毛植物門  ・ハプト植物門 
・渦鞭毛植物門  ・ユーグレナ植物門  ・クロララクニオン植物門  ・緑色植物門
 ※藍色植物門と原核緑色植物門は、植物界か細菌類かで意見が分かれている。

【参】表1.藻類の分類

◆藻類の生育場所
ほとんどの藻類は水中にいて、光合成をするので太陽光が届く範囲に生息している。海洋の表層広く覆っている。海だけでなく、河川にも、湖や池、田んぼの水面にも、ちょっと水が溜まっているところでも、そこが緑に色づいていたら藻類が繁殖している事が多い。都会であっても、室内の金魚鉢のガラス面や学校のプールの壁面でもいつのまにやら繁殖している。泥の中にも、空中にも、身の周りのどこにでもいる。
また、サンゴの中に住みつく褐虫藻という藻類がいて、共生と言われる関係を作っている。
※アイスルジー・・・南極や北極の氷にいる藻類。珪藻類
※熱湯の中にいる藻類・・・主にらん藻類。

◆藻類の共生
単細胞の原生動物であるミドリゾウリムシは、体の中にたくさんの生きたままの微細藻類のクロレラが入っている。なぜ、消化されずに生きているのかは不思議な事のようだが、お互いの利益に役立てていると考えられている。クロレラはミドリゾウリムシに保護され、ミドリゾウリムシは、クロレラが光合成で作った有機物を栄養としてもらっているのだ。
真核生物は、進化の過程で藻類を共生させてきたと考えられている。例えば、植物の葉緑体は、外から入り込んだ原核藻類が定着したものであることが証明されている。
進化の過程の中で、単細胞生物は藻類を共生させ、それがまたまるまま他の単細胞生物に飲み込まれた形で共生がおこり、それがさらに繰り返されていったことで、藻類は多様化していったのだと考えられている。

〔参〕表2.藻類の共生

〔8〕微細藻類の目

微細藻類の中の泳ぐ藻類は、眼点と光受容体があり、太陽光の中の特定の光を信号に変えて利用している。眼点はカロテノイドを含んでいて赤く見える。信号が細胞に伝わると、鞭毛運動が誘導されて、光の方向に泳いでいく。しかし、脳も神経も持たない藻類が、どういう仕組みで光の情報が鞭毛に伝えているかという解明はまだされていない。鞭毛を持たない藻類は、細胞の表層近くに光受容体を持っている。体の表面に光受容体が散在していて、光信号は細胞内の運動性タンパク質(微小管やアクチン繊維)に伝えられ、葉緑体の向きや場所を変えて、もっとも光合成しやすい環境をつくる細胞運動を起こす。

〔9〕微細藻類の泳ぎ

人間の泳ぐ速さは世界記録のクロールで、1秒間に身長の1.2倍。クラミドモナスという緑藻は、1秒間に身長の38倍で進むそうだ。他の藻類にしても、かなりの速さで進む。これは、繊毛の早い動きのためだ。1秒間に70回の周期で動くというのだから凄い。特に海中では、微細な藻類にとってかなりの粘性抵抗を受けているというのにこんなに早く動けるなんて凄まじい。
繊毛は、細胞の先端についていたり、側部や腹部など様々のパターンがあり、1本から数百のものもあるが、ふつうは2本のようだ。
繊毛は微小管という鎖状のタンバク質の束で、この微小管の滑りが繊毛の滑らかな運動を可能にしている。
     ※クラミドモナスについて詳しく書かれているサイト↓
      http://cyclot.hp.infoseek.co.jp/benmou/chlamy1x.html


海の生物 目次へ





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送