第2章  海の生物

1.藻類と共に

V.海の藻類

〔10〕クロロフィル

海の色は青く美しい。手にすくってみても透明だけど、実際、海水は青いのか・・・。
海水の水の中では、波長の長い赤い光は奥まで入れず、波長の短かい、つまりエネルギーの高い青や緑の光が中まで入り込める。
藻類はクロロフィルで光合成を行うが、クロロフィルは緑色をしている。これは、クロロフィルが赤い光・680ナノメートル(1nmは1億分の1m)を吸収した残りの光の色が緑になるためだ。
海が深くなるとクロロフィルに必要な赤い光がなくなるので、青緑色の光を吸収する必要がある。。コンブなどが茶褐色なのは、フコキサンチンという赤褐色の色素があるためだ。フコキサンチンは青緑の波長の光を集めて、クロロフィルにエネルギーを渡す補助色素である。
海藻は、種類によって必要とする光の波長が違うので、生育できる海の深さが決まっている。
海の表面の方が光合成には有利だが、紫外線も強くなり、その悪影響を受けることになる。遺伝子が損傷し、たんぱく質の合成や窒素の代謝が阻害される。そのため、オゾン層の破壊が進むと藻類は大きな打撃を受けて、結果、海の生態系のバランスが崩れてしまうことが懸念される。

〔11〕浮力

藻類の成分はほとんどが水で、気泡や油を持つものもあり海面に浮いている。
海藻は、海底の岩などに根を張って付着しているが、植物のように栄養を吸収するためではなく、その場所に定着するためのもので、浮力によって支えられているので、細くてもユラユラとしなやかに揺れている事ができる。
海藻類 アントクメ 海藻類 フシスジモク フシスジモクの浮き袋の拡大 海藻類 フクロツナギ

〔12〕月との関係

   藻類も、そのながい歴史の中で月の満ち欠け、大潮の情報などの「成体
   リズム」を遺伝子に組み込んでいるようだ。
   満月に合わせた生殖のリズムが刻まれている。

   月とともにある地球・・・宇宙は繋がっている。


〔13〕情報伝達手段にカルシウム

海藻の細胞内運動には、カルシウムが関わっているようだ。カルシウムを、情報伝達の信号にしているというのだ。
動物の筋肉は、神経からの刺激を受けると筋細胞の細胞質中にカルシウムが放出されて、それを信号として筋肉が収縮する。また、人の神経は長い細胞でできていてこの細胞膜の上を電流が流れていくが、途中にシナプスという仲介所がある。神経伝達物質を放出して次の神経細胞に電流が流れていく仕組みだが、この神経伝達物質を出させるのはカルシウムである。
海藻は、光や圧力の変化を受容体がとらえると、細胞膜のカルシウム専用門が開いてカルシウムを細胞質に流れ込ませて、環境に適応させるべく生体反応をおこす信号にしている。
カルシウムイオンは海水中にたくさんある。
かつて藻類が海中での環境適合に利用した手段は、人間も含め陸の生物にも受け継がれている。

〔14〕カルシウムをまとう

海藻や微細藻類には、カルシウムを利用した鎧を纏っているものも多い。
食べられるのを防ぐためだったり、波の荒いところで生息できるようにしている。カサノリは、大きくなると茎を白い鎧で被って、食害から防いでいる。この鎧は、海中に溶けているカルシウムと二酸化炭素と水から作った炭酸カルシウムだ。細胞壁の中で合成をしてを細胞壁の外側に結晶化した炭酸カルシウムを沈着させていく。生物が無機物から鉱物を作り出す「バイオミネラリゼーョン」は、脊椎動物の骨格形成にも繋がった。この石灰化した化石は先カンブリア時代の地層からも発見されていて、太古の時代には獲得された手段のようだ。

※カサノリはさんご礁に生息する巨大な単細胞緑藻(7〜8cm)で、波の静かなところなので、揺れる工夫よりも食害から見を守る手段をとっている。カサの部分が食べられても、茎が残っていれば再生できる。

微細藻類のまとう鎧・・・細胞の外殻は種ごとに明確にことなっている。中には非常に堅固な殻を持っているものがいる。不等毛植物門の珪藻類とハプト植物門の円石藻類だ。殻は精密で幾何学的な美しい模様を作り出している。珪藻類の殻はケイ酸塩が主成分で結晶構造にはなっていない。円石藻類の殻は方解石と同じ結晶構造を持つ炭酸カルシウムからできている。しかし、光合成のためには軽く小さくなって海のの表面に浮いていられる構造の方が有利であるのに、なぜこのように重い殻を持っているのかがなぞとされている。

この藻類による石灰化は、問題になっている大気中の二酸化炭素の封じ込めに役立つかも知れないと研究されている。

W.生殖
あまりにも無節操ではないの・・・と言いたくなるくらい、子孫を残す手段は実に多種多様である。(笑)
逆に言えば、ひとつの生殖手段に固執する人間に対して、藻類の性はとてもおおらかなのだ。

〔15〕多様な生活環

生物の生活様式を類型化し簡単にあらわしたものが生活環だが、生物が過ごす一生を比較できる。

微細藻類の多くは無性生殖で増えるが、時々は有性生殖も行う。親とまったく同じ遺伝子がコピーされるが、このとき、2つ、4つ、さらに多数に分裂して増えていくものもある。まず、核がコピーを何度か繰り返して数を増やし、親の細胞が核の数ほど分裂していく。しかし、親の遺伝子がコピーされたのであるが、親がそのまま残るのではなく、親は消えて、親と同じ遺伝子をもったものができたということになる。

海藻類の種によって生殖のパターンが多様である。
例えば、アナアオサは
同型世代交代型である。雌雄それぞれの配偶体から放出された雌雄の配偶子が受精して接合子を形成、接合子が発芽して無性の胞子体世代を形成し、成熟すると減数分裂して雌雄別の遊走子を放出、それが発芽すると再び配偶体になる。
世代で藻体の大きさや形態が異なるものを
異型世代交代型という。
さらに、一方の世代が生活環から完全に消失したものもある。

〔16〕海にも季節

藻類が増えるのにも適した環境がある。環境が適さなくなると、多くの場合、休眠胞子とよばれる胞子を作る。
代表的な藻類である珪藻は、環境が悪化すると細胞の壁を厚くして固い殻で包まれた休眠胞子を作り海底に沈む。条件が良くなると再び発芽して増えていく。
渦鞭毛藻類の一種アレキサンドリウム・タマレンセは、瀬戸内海で張るから初夏の間だけ活動し後は休眠胞子となっているが、増えている時期にそれを食べたアサリやマガキなどが毒化する。
〔17〕受精手段

単細胞の藻類は、光合成を利用するために光の信号をとらえる受光器を持っている。藻類の配偶子も鞭毛の動きと連動した受光器を持っていて、それぞれの好ましい光強度のあるところに泳いで集まることができる。

藻類の雌の配偶子、または配偶子を作る生殖器官は、非水溶性のフェロモン(それぞれ特有の化学物質)を出して、雄の配偶子を誘引する。

〔18〕ただでは死なない

たまごのような形をした単細胞のバロニアは、傷つくと自分の体をみずから細かく引きちぎってしまう。しかし、無数の核を持っているので、ちぎれた細胞にも核がちりばめられており、それぞれが固体となって成長する。

ハネモという緑藻も多角単細胞体なので、汁(細胞質)を搾り出しても、それぞれの細胞質が親と同じ形態に成長する。
〔19〕突然変異

遺伝子は時々突然変異をおこす。種の存続繁栄に不利なものは自然淘汰される。しかし、突然変異が上手く環境に適した場合は、その種が生き残ることになる。


〔20〕チャンス

藻類は一度に何百万何千万の配偶子や遊走子を放出する。大海で生き残るためには、大量に放出して生殖のチャンスを増やし、少しでも多くの子孫を残すようにしなくてはならないのだろう


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