※藻類の分類は藻体の色による。それぞれの藻類が光合成色素クロロフィルの他にも多種類の補助色素を持っており、それらが合わさった色をしている。藻類の比較的大きなまとまり(綱や門の階級)では、色調がほぼ一定であるからだろう。

表.1
藻  類  の  分  類  系
門 (Division)
綱 (Class)
調べられている種類
1 藍色植物門
Cyanophyta
藍藻綱 Cyanophyceae 150属2000種
2 原核緑色植物門
Prochlorophyta
原核緑色藻綱 Prochlorophyceae 1目2科3属3種
3 灰色植物門
Glaucophyta
灰色藻綱 Glaucophyceae 4属
4 紅色植物門
Rhodophyta
紅藻綱 Rhodophyceae 600属5500種
5 緑色植物門
Chlorophyta
プラシノ藻綱 Prasinophyceae      
アオサ藻綱 Ulvophyceae      
緑藻綱 Chlorophyceae      
トレボキシア藻綱 Trebouxiophyceae      
シャジクモ藻綱 Charophyceae      
6 クリプト植物門
Cryptophyta
クリプト藻綱Cryptophyceae 200種
7 クロララクニオン植物門
Chlorarachniophyta
クロララクニオン藻綱
Chlorarachniophyceae
     
8 ユーグレナ植物門
Euglenophyta
ユーグレナ藻綱 Euglenophyceae      
9 渦鞭毛植物門
Dinophyta
渦鞭毛藻綱 Dinophyceae      
10

黄色植物門
Chromophyta

(不等毛植物門)
Heterokontophyta

黄金色藻綱 Chrysophyceae 120属1200種
ラフィド藻綱 Raphidophyceae 1目1科
真眼点藻綱 Eustigmatophyceae 1目数属10数種
黄緑色藻綱 Xanthophyceae (Tribophyceae) 100属600種
褐藻綱 Phaeophyceae (Fucophyceae) 300属2000種
珪藻綱 Bacillariophyceae 800属
ディクティオカ藻綱 Dictyochophyceae      
ペラゴ藻綱 Pelagophyceae      
11 ハプト植物門
Haptophyta
ハプト藻綱 Haptophyceae 70属300種


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藍藻原核緑色藻は核を持たない仲間であり、細菌の仲間なので、現在では原核生物界として分類されている。
しかし、酸素発生型の光合成をする生物を植物とし、また、歴史的にも藻類として扱われ研究されてきた経緯があり、藍藻や原核緑色藻を藻類のところに入れてある。 

生物の分類はまだ確立された学問ではなく、研究者により分類の仕方は異なっている。
長い歴史の中で、共生やら交雑などが繰り返し行われ、生物は様々に多様化してきた。
植物とも動物とも分けられない生物はたくさんいて、と言うより、種までをはっきりと分類できるのは、脊椎動物ぐらいだと言われている。 生物界とは、本来混沌としたものなのであろう。人間が便宜上、分類しようとしているだけなので、いろいろと難しいものがあると思う。

しかし、1980年代から現在にかけて分子系統の手法が藻類の研究に導入され、今も盛んに研究が続けられており、先においては分類系も確立されたものになるだろう。

今は藻類の種にこだわるよりも、その
系統関係を理解し、本質を知ることが面白いと思う。


【光合成色素】

◆ク
ロロフィルa
  すべての藻類に見られる光合成の主要色素。

◆補助色素
  クロロフィルa以外の色素を言う。クロロフィルaが吸収できない光の色(波長)を吸収して、
  エネルギーをクロロフィルaに渡す。クロロフィルb・c カロテン、キサントフィル、フィコシア
  ニン、フィコエリトルなどがある。

  
※色素
色素 科学的性質 同化色素
クロロフィル Mgを中心金属とするポルフィリン環に、鎖状のフィトールが結合した脂溶性物質
 
クロロフィルa
クロロフィルb 黄緑
クロロフィルc 青緑
カロテノイド 鎖状の長い不飽和炭化水素で、脂溶性 カロテン βカロテン 橙黄
キサントフィル ルテイン
フコキサンチン
フィコビリン ポルフィリン環が開いた形で中心金属を持たない、水溶性 フィコシアニン
フィコエリトリン


※色による比較
分類 光合成色素 種の生物例
藍藻類 ◎クロロフィルa ◎フィコシアニン
・βカロテン・フィコエリトリン
ユレモ・ネンジュモ
紅藻類 ◎クロロフィルa ◎フィコエリトリン
・βカロテン・ルテイン・フィコシアニン
アサクサノリ・テングサ・フノリ・トサカノリ・カワモズク
褐藻類 ◎クロロフィルa ◎フコキサンチン
・クロロフィルc・βカロテン
コンブ・ワカメ・ヒジキ・モズク・ホンダワラ・ウミウチワ
緑藻類 ◎クロロフィルa ◎クロロフィルb
◎カロテン ◎ルテイン
ボルボックス・クラミドモナス・クロレラ・アオサ・カサノリ
※種子植物
  コケ・シダ
◎クロロフィルa ◎クロロフィルb
◎βカロテン ◎ルテイン
ソテツ・イチョウ・バラ・イネ・ゼニゴケ・スギナ・


※クロロフィルaとbはどちらも赤色部と青色部に非常に強い吸収帯を持つ。


クロロフィルaは、主に青い光(波長435 nm前後)と赤い光(波長680 nm前後)の光を吸収する。緑色の光はあまり吸収しないので、反射されたり散乱されたりして葉っぱが緑色に見える。

色素の違いは、異なる波長の光を吸収しているということ。いろいろな色の色素を組み合わせれば、太陽の光(連続スペクトル)を効率よく利用することができる。1つの色素しか持っていなければ、その色素が吸収する光しか利用できない。
光合成に使われない場合は、クロロフィルが吸収した赤と青の光は大部分熱になる。

【光合成】

藻類の光合成 (photosynthesis)も植物と同じく葉緑体(クロロプラスト)内で行われる。
光合成は、クロロフィルが吸収した光エネルギーを使って、二酸化炭素と水から酸素と糖類[CH
2O]を作る作用である。

                     ※藻類の光合成のメカニズム

※CO2(二酸化炭素)とH2O(水)と太陽光(光エネルギー)から、
C
6H12O6(ブドウ糖)が作られH2O(水)とO2(酸素)が発生する。

光合成は大きく2つの段階に区別される。1つは炭酸固定系。光エネルギーをクロロフィルが吸収することにより活性クロロフィルになる(励起される)。しかしその状態は不安定なため元のクロロフィルに戻ろうとて、このときに水を酸素(O2)と水素(H2)に分解してNADPH2(ニコチン酸)とATP(アデノシン三リン酸)を作りだす。この反応で分解産物として酸素が発生する。NADPH2とATPはエネルギーのようなもの。
 もう1つの段階は電子伝達系と呼ばれ、NADPH2とATPを利用して、二酸化炭素から種々の糖(炭水化物)がつくられる。

                       ※光合成の反応過程

@光化学反応
  光合成色素が光エネルギーを吸収して、クロロフィル
aが活性化される。
A水の分解
  活性化したクロロフィルaにより水が水素とむ酸素に分解される。
B光リン酸化反応
  Aと同時に活性クロロフィル
aの働きで、ADPとリン酸から高いエネルギ
  ー を持つATPが合成される。
C二酸化炭素の固定
  ATPとHを使い、取り入れたCO2を還元し、ブドウ糖などの炭水化物を合
  成する。

 @〜Bまではチコライドで、Cはストロマで多くの酵素の働きを得て行わ
  れる。

【葉緑体】

光合成が行われるのは葉緑体であり、その中にあるチラコイド膜内で、クロロフィルが光エネルギーを使って水を分解し、プロトン+酸素分子+電子を作る。このときにできた電子から、NADP+→(還元)→NADPH2(脱水素に関する補酵素)ができる。さらに、チコライドロマ(葉緑体基質)で、チラコイド反応で得られた、NADPH2とATPを使って二酸化炭素を原料としてブドウ糖(炭水化物)が作られる。この一連の反応を カルビン-ベンソン回路という。

葉緑体(chloroplast)には透過性の良い外部境界膜と、透過性の低い内部境界膜がある。
クロロプラスト(葉緑体)の内部はストロマと呼ばれる。ストロマには高濃度の酵素があり、その半分はリブロースビスリン酸カルボキシラーゼ(Rubisco) である。

※葉緑体図を只今製作中

また、ミトコンドリアと同様に二本鎖の環状DNAや原核細胞型のリボソームが存在する。DNAは約100種のタンパク質をコードしているが、それでも葉緑体で必要な約10%にしか過ぎない。

ストロマ内には膜で包まれたチラコイドという構造物が存在する。チラコイドが10〜100個積み重なり、グラナという構造をとっている。グラナ間はストロマラメラで連結されている。 チラコイド膜はリン脂質の含量が約10%と低く、ガラクトースを含む糖脂質が大部分を占める(80%)。また、脂肪酸は不飽和度が高いため、膜の流動性が高い。
クロロフィル(Chl) a,、b・・・光を受容する受容体
クロロフィルはプロトポルフィリンIXの誘導体で、中心にMg2+が配位している。Mg2+が配位していないものをフェオフィチンという。

クロロフィル a (Chl a)の構造
クロロフィルはプロトポルフィリンIXの誘導体で、中心にMg2+が配位している。クロロプラスト(葉緑体)中の大部分のクロロフィルは光を集めるアンテナの役割を果たす。吸収された光子のエネルギーはアンテナクロロフィル間を励起エネルギーとして移動し、アンテナクロロフィルよりも励起エネルギーの低い反応中心クロロフィルに集められる。クロロフィルが吸収できない波長の光を集めるために、カロテノイド(橙色)フィコエリトロビリン(赤色フィコシアノビリン(青色)など他の色の色素も使われる。
反応中心クロロフィルは、タンパク質、電子伝達補因子、クロロフィル二量体からなる複合体である。
 
フェオフィチンa (Pheo a)の構造
クロロフィルの分解産物で、クロロフィル中のマグネシウムが2個の水素で置換されたもの。藻類が死ぬとクロロフィルはフェオフィチンに変化する。
※ポルフィリンのうち、真ん中に金属イオンが入っているものを化合物を金属ポルフィリンと言う。金属ポルフィリンはいろんなところに存在している。。例えば、血液のヘモグロビンの活性部位には、鉄ポルフィリンが存在している。また、緑の葉では、クロロフィル(マグネシウムポルフィリンの還元体)が光合成を行っている。金属ポルフィリンの働きや性質は、ポルフィリンの中心に存在する金属イオンの種類や酸化数によって違う。  


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