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 第2章 光エネルギーを化学エネルギーに転換するしくみ

 2.5 光科学反応T

化学系U(PSU)では水を酸化するための強力な酸化剤がつくられたが、光化学系T(PSU)ではNADP還元のための強力な還元剤がつくられる。

シトクロム複合体によって還元されたプラストシアニンはチラコイド内腔を拡散し、PST反応中心に電子を渡す。
光化学系T(PS)反応中心もまたクロロフィルスペシャルペアをもち、その吸収極大は700nmである。そして、PST集光性複合体反応中心からなる。

PSTの構造もPSUに似ていて複合体は数十種のサブユニットから構成され、LHCTが光を吸収すると、反応中心P700が励起され電子を放出する。

電子は、P700A0Q(フィロキノン)FxFA・FB という順に伝達され、FD(フェレドキシン)に渡される。
電子を失ったP700は、PC(プラストシアニン)から直接電子を受け取る。(下の図)

            PSTの電子の流れ


P700 クロロフィル2分子のスペシャルペア
AO T分子のクロロフィル
Q Chl-aと同じフィトール鎖がある。
FX 4Fe-4Sセンター
FA 4Fe-4Sセンター
FB 4Fe-4Sセンター
PST-C FA FBを結合
PST-D FDとPSIの電子伝達
PST-E FDとPSIの電子伝達
PST-A アンテナ・コアと反応中心の機能
PST-B アンテナ・コアと反応中心の機能
FD 水溶性たんぱく質・2Fe-2Sセンター

A0はT分子のクロロフィルと考えられている。
Fx、FA・FBはともに鉄−硫黄センター。

サブユニットの構造もPSUによく似ていて、中心部にはPSI-APSI-Bというサブユニットが二量体を形成している。PSI-Aは、PSIIのD1+CP47、PSI-BはD2+CP47に相当しているので、PSUの反応中心とコア・アンテナが一緒になっているに等しい。

PSI-Cは二つの鉄−硫黄センター(FA,FX)を持っていて、電子伝達に関係。

PSI-DPSI-Eはストロマ側に位置し、FD(フェレドキシン)とPSIの電子伝達。PSI-FPC(プラストシアニン)の結合部位。

           PST電子伝達の反応式

PSIで再び光のエネルギーを得て励起状態になった電子は、Fd(フェレドキシン鉄イオウたんぱく質)に受け渡され、ストロマの補酵素2NADP+(ニコチン酸アミドアデニシンヌクレオチドリン酸)に移り、FAD(フェレドキシン-NADP+ レダクターゼ)の助けを借りて2NADPH2+が作られる

また、このとき1電子あたり1H+がストロマから取り込まれる。
NADPHは光合成電子伝達の最終産物である。

P700は光で励起されて電子を放出し、酸化型P700*になる。P700*PC(プラストシアニン)からの電子で還元される。その電子は、PSIIから電子伝達系で伝達されてきた電子である。

一方,P700から放出された電子がシトクロムb6-f複合体に戻され,H+をチラコイド内に汲み込むのに利用される循環的電子伝達もあるが、詳しくは研究中であるようだ。

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 2.6 ATPの合成

チラコイドでの反応

シトクロム複合体によるPQH2からPCへの電子伝達で放出されるエネルギーによって、ストロマ中の水素イオンがチラコイド膜内腔に汲み入れられる。
チラコイド膜内腔(ルーメン)はストロマと水素イオン濃度差があり酸性に傾いている。

こうして生じたルーメンとストロマとの水素イオン勾配のエネルギーを利用して、ATP合成酵素ATPを合成する。(光リン酸化反応)
※詳しくは下図ATP合成で説明。

ATPは全ての生物のエネルギーの受け渡しに使用されている。ATPはアデノシン三リン酸の略で、アデノシンに3分子のリン酸が結合した化合物である。
末端の1分子リン酸が、切れると多量のエネルギーが放出され、結合する時にはエネルギーが貯蔵される。
生物が利用できるのは化学結合に蓄えられたエネルギーだけであり、特にたくさんのエネルギーを蓄えているATPの高エネルギーリン酸結合は重要であるため、「生体のエネルギー通貨」と言われている。
ADP+Pi → ATP
ATP+H
2O → ADP(アデノシン二リン酸)+Pi(リン酸)


ATP合成
ATP合成酵素の構造は、まるで遊園地にある回転式の乗り物のようで面白いこれは、世界最小の分子モーターで、デンプン合成のエネルギーを作る。

水素イオンが、チラコイド膜内腔(ルーメン)とストロマの濃度差による浸透圧で、ルーメン側からストロマ側に押し出される。その通り道は、ATP合成酵素の土台A土台Bの間から入り、Aの回りをぐるっと回って、ABの間からストロマ側へ抜ける。

この水素イオンがAを回る時、Aの土台も一緒に回していく。そしてAに固定されている酵素の軸も一緒に回る。Aの酵素土台は、チラコイド膜の中で回転するモーターなのだ。

しかし、土台Bは、チラコイド膜に固定されていて動かない。酵素の頭の部分も、Bに固定子により固定されているため動かない。

すると、酵素の頭の部分と、中に入っている酵素の軸との間で摩擦が起こり、エネルギーが発生する。ATP合成酵素はこのエネルギーを利用して、ADPとリン酸からATPを合成するのだ

水素イオンがルーメン側に蓄えられる過程は、これまでに説明したとおり、光化学系Uで水が分解された時にできたものと、シトクロム複合体のところで電子を伝達する時に離されたものである。


光化学系では光エネルギーを利用してATPNADPH2にエネルギーがたくわえられた。


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