オーロラ

第一章  オーロラの舞う街 ――イエローナイフ旅行記――       

3.オーロラの夜  1日目

 街から少し外れたプレリュード湖の近くにあるキャンプ場が、冬の間はもってこいのオーロラ観測地となる。ホテルからバスで30分程で着いた・・・といっても、運転手さんけっこうスピードをだしていたけど。

 そこには、大きなロッジが幾つも建っていた。ほとんどのロッジが満杯状態だったが、小屋の明かりが外に漏れないように配慮されていた。中は暖炉の火で暖まっていた。夕食のチャウダーも用意されている。外はかなりの冷え込みだったが、これは良い傾向だった。暖かくて雪が降るような天候だと、雲の上のオーロラが見えないからだ。案の定、ホテルを出るときまでは曇っていた空が、満点の星空となった。

 北極星が高い! オリオンが随分低い! 天の川が鮮明に見えている。これほどまでの星たちには、もう今の日本では見ることはできないだろう。しかし寒い、ロッジの中で、ひとまず重装備を整えることにした。ただでさえ外は真っ暗なのに、みんなだるまさんになってしまったから、外にでた時は、もう誰が誰だかわからなかった。

 北の空に、緑の帯が見えた。もしかしたらこれがオーロラだろうか?
雲が、町明かりで白っぽい緑色に色づいているようにも見えたが、光害のないイエローナイフでは、それはありえない、オーロラとの初遭遇かと皆がざわめいた。

 その時、「ディナーの準備ができました、冷めないうちに食べてください」と呼ぶ声がした。「まだまだ、これから大きくなっていきますよ。」との案内に、せっかく用意してもらったオーロラディナー・スペシャルメニューであるし、よし、まずは腹ごしらえしようということになった。サラダとチャウダーとパン・・・他にもいろいろあったが、残念ながら覚えていない。Tちゃんは、オーロラが気になって食事が喉を通らないようだ、すぐにカメラを抱えて外に出て行った。オーロラを撮影しようという人たちも、食事を早々に引き上げると、カメラを持って飛び出していった。つまり、私のいたテーブルは写真撮影が目的の星の会のメンバーだったので、ひとりポツンと食事をすることになってしまった。

 私は、写真撮影はできない、器械類は大の苦手。ただ、感動したくてきただけ。でもやっぱり気になって、自分も食事を早々と済ませ、外でオーロラが出るのを待つことにした。(だって、写真班の連中ときたら、オーロラが出現しても、皆に知らせることなど忘れて撮影しているに決まっている。いつも思うのだが、星の会の人達は、夜の観測のために仕事しているようなものではないだろうかと(笑)。)

 淡い緑の光の帯が時々あらわれたが、この日は、最初に見たもの以上のものは出なかった、期待していたオーロラのカーテンを見ることはできなかった。
 女の子達は、さらさらで固めることのできない雪だったが、工夫して雪だるまをつくるのだと奮闘し始めた。星座案内をしてもらったり、展望台に上がっていったり、ロッジでおやつを食べたりと、それなりに楽しい時間が流れた。  


                                 プレリュード湖近く  撮影 田中 直美
                   

あぁ! それにしても、なんという星空だろう。。。。。一人静かに、星が見たくなった。

 バンガローを取り囲むように、針葉樹林の林があった。個人の別荘があるのか、奥へと続く道が作られていた。1本道なので迷子になることはない、雪明かりがほんのりと道を案内してくれた。
 もう誰の声も聞こえない、静寂とピーンと張りつめた空気感が清清しく心地よい。空を見た、そこには、昔見た満天の星空が広がっていた。子供の頃、よく、ひとりで星を見ていた。私は学校が苦手だった。勉強も運動もけして嫌いではなかったが、友達を作ることができなかった。遠足でもひとりポツンとお弁当を食べていた。学校に休まず通っていたのが、5年の時、突然登校できなくなった。病気だということにして、長期間休んだ。両親の転勤を機に、転校先では再び学校に通う事ができるようになっていた。移転先は自然に恵まれた美しいところで、あの時遊んだ小川や森、あの時見上げた星空を忘れる事はない。

 そんなことを思い出しながら、柔らかな雪に包まれるように寝転がって星を見ていた。
 しばらく雪の上に寝そべって星を見ていたが防寒で固めているとはいえ、ここは厳寒のイエローナイフなのだ、身体がかなり冷えていた、小屋に戻らなくてはいけない。
 夜の冷え込みは、さすがに厳しい。風はそんなに吹かないところらしいが、真冬にはマイナス40度まで下がるという。まつ毛が凍って瞬きしにくい。ホッカイロも長くは持たない。水分は全て凍りつくので、雪がさらさらしていて身体についてもはたけば落ちる、濡れることはない。

 オーロラが空を舞い踊るのを見たい、そんな気持ちを残したまま帰りの時間となった。延長を申し出たが、契約されていないということでダメだった。(T_T)
 私たちが帰った後に大規模なオーロラが出現したそうだ。このことは、本当に残念でならない。許されるなら、あのまま朝まで残っていたかった。しかし、明日もオーロラ鑑賞が予定されているので、そちらに期待することにした。
 オーロラは、あくまでも自然現象なのだ。イエローナイフでは晴天率も良く、かなりの確立でオーロラが見られるとはいえ、数日限りの滞在では、やはり見れたら幸運というべきことなのだ。

  

2001年1月22日 22時     イエローナイフの星空   北緯62度27分 西経114度22分

2001年1月22日 22時      宮崎の星空   北緯31度91分 西経131度42分

          

  




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