光害問題について
(
ひかりがいもんだい)

pleiadさんが光害問題について調べたことや、熊本県民天文台
に出向して取材したことをレポートにして送ってくれた。

このレポートを一人でも多くの人に読んで欲しいと思い、
切なる願いを込めてこちらに掲示しました。

                     --2004.9.15



光害とその対策
 
by pleiad
  

“光害”。公害と区別するために、あえて“ひかりがい”と読む。まだまだ認知度の低い言葉である。

 光によってもたらされる害とは、どのようなものがあるのだろうか。私たちは、生活に密着した影響があることに気づいていないだけなのだ。

 都会では夜空に星が見えない。今や当たり前のこと。街中に不必要に溢れるネオンサインやサーチライトなどに大きな要因があるのだ。住宅に隣接する街路灯の明かりが強すぎて、室内を明るく照らし、住民が睡眠障害を訴えるケース。田畑の脇に立つ街路灯が夜通し作物を照らすことで、農作物へ悪影響を与えるケースもある。また、まぶしすぎる街路灯は、夜間の交通事故を引き起こす1つの要因となることもある。

 これら、強すぎる照明や不要な方向や場所へ向けた灯り、そしてその無駄な灯りのために放射される熱や浪費されていくエネルギー。これらの悪影響を“光害”と呼んでいるのである。

 光害は後処理をすることができない。原因をなくす、または改善することでしか対処する方法がないのだ。

 言うまでもないことだが、電灯は現代社会に必要なものである。夜道を照らす街灯、車のヘッドライト、夜間に点す店の看板…。安全に、豊かな生活を送るためにも必要不可欠であり、何より文明の象徴とも言うべきものである。ではこの照明ともっと上手につきあい、利用する方法を考えようではないか。


 ここに熊本県城南町での街づくり運動の1つを紹介する。

 城南町は熊本市の南に位置し、田園と古墳を抱えるのどかな町である。古墳公園の中には、アマチュア天文家らが募金によって建設した『熊本県民天文台』がある。

 平成13年、城南町の住民たちから「通学に利用する農道に防犯灯を付けて欲しい」という要望が町へ寄せられた。住民が安全に生活するためにも必要なものである。町はすぐに予算を作り、防犯灯を取り付ける計画を立てた。しかし、その防犯灯からのもれ光によって道路周辺の作物(稲)に結実障害が出ることが懸念された。実際に賠償問題にまで発展したケースもあったのだ。

 一方、天文台でも自分たちの住む町の美しい空を守るために、これ以上夜空が照明による影響を受けないことを願っていた。天文台は町や住民団体と相談をしながら最も適した防犯灯を探した。何社かの照明メーカーに働きかけてデモ機を送ってもらい、点灯実験を行うことにした。その中で出会ったのが“上方光束ゼロ”と呼ばれるタイプの照明である。内蔵された反射材のおかげで上方向や横方向への漏れ光がなく、すべての光が下方向のみに集束され、道路をより明るく照らすことができる。

 しかし、これまで“上方光束ゼロ”の照明は、高速道路などで使われており、一般道で使われることはなかった。高速道路では一般の道路よりずっと高い位置から照らすために一般道路よりも強力な特殊電球が使われている。試行錯誤の結果、一般道路に最適な街路灯が生まれた。この照明を町や住民たちに見てもらい、住民団体の推奨を得ることができて、この“上方光束ゼロ”の照明が採用となった。

 だが、これですべてが解決したわけではない。“上方光束ゼロ”の街路灯の本体価格は一般の街路灯のほぼ倍であり、特殊な取り付け金具も必要とすることから当初予定の半数ほどしか取り付けることができなかった。しかし高効率型蛍光灯を使用することから、従来の蛍光灯より電球交換の頻度は少なくてすむ。交換の手間や維持費が減り、なにより漏れ光がないため光熱費が削減できる。やがては町全体の街路灯を上方光束ゼロの照明に取り替えていく予定のようだ。

 実際の“上方光束ゼロ”の照明は、これまでの照明とどのように違うのか。熊本県民天文台の艶島台長に夜の町並を案内していただいた。下の写真を見比べてもらいたい。“上方光束ゼロ”の街路灯とこれまでの街路灯が付いた道路を見比べて、まず町の様子がまるで違うことに驚く。一般道ではずっと先の街路灯の光がちょうど目の高さになって飛び込んでくる。前方の道路よりも街路灯の光の方に目が行き、そのまぶしさのせいで自動車や歩行者など路上のものが見えづらい。しかし、上方光束ゼロの街路灯がついた道路では、ひとつ先の街路灯の光はほとんど見えないが、その下の道路は明るく照らされ、路上の様子もよく判る。 無駄に光をまき散らす前者に比べて、上方光束ゼロの照明は、下方はより明るく、しかし町並みの夜景に落ち着きを醸し出す。 



これまでの直管蛍光灯照明



上方光束ゼロの街路灯


※写真提供 熊本県民天文台 台長 艶島 敬昭

 足元はより明るく、しかし見上げれば星空の見える町。城南町の取り組みは“星空を守る会「国際ダークスカイ協会 日本セクション」”から感謝状を贈られ、またIWASAKI環境照明賞、審査員特別賞を受賞するなど、各方面で評価されている。

 現在、城南町を始めとする熊本県内では、夜間に空へ向けて投光されるサーチライト広告はひとつもなくなった。サーチライトに反対する住民団体と熊本県民天文台の働きかけで社会問題化し、各施設が自主的にサーチライトの投光を止めたのだ。これらの施設にも国際ダークスカイ協会から感謝状が贈られたそうである。

 無駄に光をまき散らし、エネルギーを浪費するのが文明ではない。

 消費するエネルギーは必要最小限に抑え、なおかつ生活の質は落とさず、自然と共存できる環境。これほどの贅沢はないだろう。「星空の美しい町」は決して「田舎」と同義語ではないのだ。

 そんな町づくりは一人ひとりの努力と協力で可能となるのである。それぞれが自覚を持ち、自分の住む町や自然を愛する気持ちを持てば良いだけのこと。城南町の取り組みはそれを教えてくれたように思う。

 今、全国で「光害防止条例」を掲げる市町村が増えている。環境庁主催「スターウォッチング」で何度も日本一の栄誉をいただいた宮崎県で星空を守る運動が活発化しないのは何故なのか。「宮崎は田舎だから星が見えて当たり前」と思っている県民がなんと多いことだろう。しかしこの美しい環境は、守っていかなければ、近い将来失われてしまう。宮崎の特色(観光の目玉)として「星空の美しさ」を挙げるのであれば、県内各自治体が率先して環境保護に取り組まなくてはならない。サーチライト、ライトアップ運動、派手なネオンサイン…。これらの灯りを消し、控えること。もちろん省エネにもつながる。その他にもできることはたくさんある。住民一人ひとりの自覚と各企業・自治体の協力で可能となるのだ。

 宮崎県でも遅ればせながら、光害についての取り組みが始められようとしている。条例制定までこぎつけるかどうか判らないが、条例などなくても環境は私たちの手で守ることができる。まずは身近なところから始めてみよう。無駄な灯りを1つ消せば、星空が近くなるはずだ。

“光害をなくすことは、豊かなくらしの環境をつくること。そして守ること”  


最後になったが、お忙しいところ突然の取材にも拘わらず、快く応じてくださった
熊本県民天文台の艶島台長を始めスタッフの皆様に、心からの感謝を申し上げたい。

 そしてこれからの宮崎、いや地球上の光害と公害をなくす取り組みを始めようとしている仲間たちにあたたかい目とご指導をいただけるとありがたいと思う。

 私たちが壊し始めた自然を、その”責任”を持って”誇り”に変えられるまでに回復させられる日がくることを切に願っている           



写真提供 : 熊本県民天文台台長 艶島 敬昭

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