第2章  海の生物

1.藻類と共に


X.地球環境と藻類

〔21〕毒

藻類は、時には大発生することがある。藻類の中には毒の成分を持つものもあるので、まるで藻類が人類の敵であるかのように叫ぶ人たちもいるが、自然の生態系のバランスを崩したのは、他でもない人間なのだ。
人間がやっていることを藻類が警告してくれているのだと受け止めなくては、人類の未来はないだろう。

@赤潮
赤潮が原因で魚介類が大量死することがある。赤潮は、微細藻類が異常発生し、それが集積して赤く見えている現象だ。原因種は主に渦鞭毛藻に属するもので、夜光虫や繊毛を持つ単細胞藻類だ。
赤潮が原因で海水が酸欠状態になること、鰓に引っかかると鰓組織が腫れて呼吸困難を招いたり、藻類の組織が破れると出てくる毒素にやられたりするようだ。
大量繁殖する原因として、嵐や渇水の後での魚の大量死による富栄養化、日照などの自然現象によるものもあるが、それらはあくまでも一過性のものであるのに対し、最近の日本各地の沿岸に拡大し、常時発生する赤潮は、生活廃水や工場廃水などによる窒素やリンなどの河川からの流入や、養殖による汚染などの人的なものが原因していると考えられる。

     
※ヤコウチュウの解説・写真のあるサイト↓
        http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/Kankyo/akashio/Noctiluca.asp


A赤くない赤潮
原因となる藻類が不等毛植物門のラフィド藻や珪藻だと褐色や黄褐色になるし、ユーグレナ植物門のミドリムシ類だと鮮やかな緑色となる。日本では60種類以上が赤潮の原因種として報告されている。

Bアオコ
◆淡水性・・・ミクロシステスやアナベナなどの藍藻による。
  湖沼に発生して、水を緑色にする。これも富栄養化によるもので、主として生活廃水が原因となっ
  ている。
  光合成色素としてクロロフィルの他にフィコシアニンという藍色の色素を持っていて、水がアオコ、
  青い粉をふいたようになる。
  アオコはミクロシスチンという毒を出し、吐き気や下痢、肝臓障害が起こることもあるので、水道水
  などの汚染が心配される。人間の身勝手な行動が水質を悪化させているのであって、アオコが
  公害の原因だと責任転換するのは可笑しいことである。

     
※アオコの解説・写真のあるサイト
        http://research.kahaku.go.jp/botany/aoko/aoko.html

◇海水性・・・トリコデスミウムという藍藻
  熱帯や亜熱帯海域の海域でみられ、外洋の表層を赤く染める。トリコデミウムは弱ってくるとフィコ
  エリスリンというピンク色の光合成色素が溶け出して海水を赤く染める。紅海の名前は、この赤潮
  に由来すると言われている。

     
※トリコデスミウムについて詳しくかかれているサイト↓
       http://research.kahaku.go.jp/botany/aoko/aoko.htmll


C海藻
ヒジキがヒ素を多く含むということで、日本からのヒジキの輸入が禁止になった国がある。日本ではヒジキのヒ素中毒は報告されていない。また、海藻が吸収する海中からのミネラルの中には、ヒ素、カドミウム、水銀、鉛なども含まれているので、外国で海藻は毒があると言われる原因でもある。しかし、海藻は高濃度蓄積したりしないので、健康を害する心配はいらない。
しかし、美しい髪を作ると言われているヨウ素は、甲状腺ホルモンを作る必要不可欠なな栄養素だが、摂り過ぎると代謝障害が起こる。

実際に毒のある海藻もある。緑藻のイワヅタ、滑走のモズク、紅藻のオゴノリの中毒が報告されている。これらは時期によって毒を持つので、貝毒やふぐ毒のようにバクテリアや微細藻類由来のものだと言われている。


D青潮
東京湾などに海の表面がエメラルドグリーンに変色することがある。これは、海水中のイオウ粒子によって青白い色がついたものだ。大量の藻類が死んで沈下していたものが、細菌により分解され海底は無酸素状態になる。そして硫化水素が発生しどんどん溜まっていく。涼しくなって海面温度が下がり、上下に混ざりやすくなったところへ沖向きの風が吹くと、湾の表面の海水が沖向きに流れ、ひきづられて海底の水が湾の岸に上がってくる。硫化物は酸化されてイオウ粒子となり、海は青白く変色して青潮となる。見た目はきれいだが、無酸素状態の水なので魚は窒息死してしまう。


               


〔22〕海の森

このまま温暖化が進めば、大気中の二酸化炭素濃度が上昇して、80年後には人間が生存できなくなるという調査結果が出ている。(>_<)
その対策のひとつとして、藻類が研究されている。
光合成能力が高く、無毒の藻類を利用して、二酸化炭素を減らそうというものだ。
また、サンゴ形成に寄与する藻類を増やしせば、二酸化炭素を炭酸カルシウムとして固定化することもできる。
地上の森に変わる、海の森だ。
ただ、人間が生態系を大きく変えることに問題がないとは言い切れないし、自然がそう簡単に人間に都合よく働くものではない事も承知しなくてはならない。
人間が犯した過ちを根本的なところから改革する手段をとらなくては解決にはならない。
まだ手遅れではない事を信じたい。

〔23〕藻場

日本近海は親潮や黒潮が流れる影響もあって、多種多様な海藻による藻場が形成されている。
北海道のコンブ場、対馬海流のあるガラモ場、黒潮流れるところの
アラメ・カジメ場などそれぞれが海産資源の宝庫だ。魚の産卵や幼魚の家でもあり、魚の餌にもなる。ガラモはホンダワラの仲間で、ちぎれて流れ藻となって外洋の魚の成育に関与している。

日本の海産資源を支えている藻場を壊す沿岸工事は、食料危機が囁かれる今日にあって、愚かしい作業だとしか言いようがない。


     ※アラメ・カジメについて詳しく書かれているサイト↓  
        
http://soruipc2.bio.mie-u.ac.jp/top.html   

     ※海藻について詳しく書かれているサイト↓
        
http://life.s.chiba-u.jp/nakaoka/SeagrassRes_jp.htm   

◆ホンダワラ
  最も典型的な藻場はガラモ場で、ホンダワラの仲間である。ホンダワラは茶色の大型海藻で、ちぎ
  れたものが海水浴場などでぷかぷか浮いているのをよく見かける。ちぎれても体に空気の入った
  固い袋を付けているので、海面に浮いて流れているのだ。藻類は光合成で栄養を作り、海水から
  ミネラルを吸収できるし、藻類は独立した細胞の集まりみたいなものなので、魚にかじられても新し
  い細胞を増やす事が出来る。ちぎれても、そのままさすらいの旅を続ける事が出来るのだ。流れ
  藻には、一緒にちぎれた仲間や多種の藻も一緒に一塊となっていたりして、外洋での稚魚の保育
  園だったり、藻類に付着しているプランクトンを餌にする魚の餌場だったりと魚のオアシスとなって
  いる。また、離れた場所に藻場を形成することができる。

     
※ホンダワラの詳しい解説、写真のあるサイト↓
        http://soruipc2.bio.mie-u.ac.jp/top.html

〔24〕海藻の栄養

藻の豊富なミネラル分は、人間にとって不可欠な栄養素である。また、海藻にしても、寒天などの加工品にしても、カロリーゼロで繊維質豊富なので、生活習慣病の予防に役立つ。
また、がんの予防にもなることが知られている。

イラスト 三重大学 生物資源学部 藻類学研究室 倉島 彰 
〔25〕微細藻類の栄養

海藻だけでなく、微細藻類のクロレラも栄養豊富である。これらは大量生産が可能なので、健康維持に大いに役立つ食品となる。また、抗がん剤や免疫活性剤として作用する報告もされており、今後更に医薬品としての研究が進められていくだろう。



地球の今の生命の繁栄の基盤は藻類が作った、
そして、今も生命を支えてるエネルギーの基もやはり藻類なのだ。

海の食の連鎖の基になっているのは微細藻類で、
藻類が太陽エネルギーを有機物に変える能力で海の生態系は成り立っている。
 陸でも、藻類から引き継いだ葉緑体で陸上植物は栄養を作り出し、
それを動物が食べることで生命が維持されいる。

地球の生命の歴史において、藻類と人とのかかわりには深いものがあったが、
これからの私達の未来も、藻類の恩恵を受けることができるか否かに関わってくるだろう。

                                                ---cacao


参 考 文 献
人も環境も藻類から 石井依久子 裳華房出版
藻類の多様性と系統 岩槻 邦男・馬渡 俊介 監修
千原光男 編集
裳華房出版
海の生き物
100の不思議
東京大学海洋研究所編 東京書籍
生物図録 鈴木 孝仁 監修 数研出版


海の生物 目次








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